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三重のデザイン事務所からCG・モーショングラフィックススタジオへ。代表ヒストリーをたっぷりインタビュー。
2022年1月、Cono-design(コノデザイン)は株式会社1コマへと法人化し、それを機に活動の主軸であったデザインから映像へと軸足を移しました。さらに映像の中でもCG、アニメーション、モーショングラフィックスというジャンルに絞り、新たなスタートを切っています。
なぜ、モーショングラフィックスなのか?実は幼いころからの「好き」が私の背中を後押しし、大きな活力になったのでした。
今回は取材記事を中心に執筆されているライターの杉本友美さんと対話しながら、私の学生時代からUターン開業、法人化までをぐっと掘り下げてお話させていただきます。
杉本:ライティングファーム紡 ライター
北川:株式会社1コマ 代表
影響を受けたコマ撮りアニメーションや海外のMV
杉本:2020年冬に開催された「Designship2020」のデザインシップチャレンジ デジタル部門で審査員を受賞された作品を拝見しました。可愛らしさと軽やかな動きがマッチして、見ていて何だかほっこりします。小さなころから可愛らしい動画が好きだったそうですね。
北川:ありがとうございます。そうなんです。小さいころにNHKで放送されていたパクシとかニャッキとか、ピングーとか…。プチプチアニメ、ミニチュアの世界が大好きだったんです。
こういったアナログ感のあるアニメーションばかりを集めてストックしていました。物心がついたころにはすでに絵の仕事がしたいと思っていて、高校2年のころには、四日市にある「もとまち芸術予備校」に通い始めていました。
杉本:芸術予備校ではどんなことを?
北川:芸術大学は志望する学科によって受験課題が異なりますが、私の場合は第一試験がデッサン、合格したら第二試験が立体物、粘土かケント紙立体でしたね。予備校なので、そういった受験対策の課題を練習する日々でした。
杉本:少し変わった授業もあったそうですね。
北川:たまにレクリエーション的な授業があって。美術館に出かけたり、映像作品を鑑賞したり。その中で印象に残っているのが、自分の好きなものを集めてファイリングするという授業です。その時に「自分の好きって何なんだろう」と思ったとき、「コマ撮り」が思い浮かびました。
先にお話しした、テレビで放映されていたアニメーション以外にも何かあるかな、と探し始めて。当時はYouTubeもなく、Amazonで海外のコマ撮りアニメーションのVHSを取り寄せていましたね。
杉本:予備校で「好き」を考えるきっかけがあったんですね!海外の映像にも関心を持って。
北川:ちょうどそのころ、自宅でBS放送が見られるようになって。MTVという番組で、海外のミュージックビデオを見ていました。
マニアックなものもたくさんあって、ダンスもすごくかっこいいんですよ。大きな衝撃を受けました。当時の日本にはない、何か先鋭的で、音楽に負けることなく映像が一つのアート作品になっているような…。一気にのめりこんでいきました。
北川:あと、予備校の本棚にあったVHSで、チェコアニメの巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエルの作品集にも大きな衝撃を受けました。予備校卒業時には先生からチェコアニメのDVDをプレゼントしてもらったことが記憶に残っています。
杉本:ダンスといえば、中学・高校時代にはよさこいソーランにも取り組んでいたそうですね。
北川:はい。中学3年生のころから地元の三重県鈴鹿市で3~40人くらいのチームを作り、よさこいソーランでいろんな祭りに参加していました。私はその中でも振付のリーダーで、振付や全体のダンス構成を担当していました。チーム内に5人くらいの組を作り、それぞれに手ぶり、身振り、時にはボードに絵をかいて伝達していました。
杉本:当時やっていたことは、まさに動画制作の原点ともいえますね!
北川:とにかく動きのあるものが好きだったんだと思います。大会に出場する際に使う音楽は、地元の民謡を1小節入れないといけないんですが、当時はそれほどネットも普及していない中で、北海道在住の音楽家さんに依頼してオリジナル曲を制作してもらいました。出来上がった音楽を聴いて振付を考えて…とても楽しかったですね。
映像の学科へ進学、新卒で3DCGクリエイター
杉本:高校3年のころには映像を学びたいと。芸術大学で念願の映像を学んだんですね。
北川:京都の映像に特化した学科に入学しました。それまでの高校生活ではマニアックすぎて理解されなかったものが、共通言語として仲間同士語り合えたのには驚きでした!マニアックな人の集まりでしたね。
授業では、劇映画やドキュメンタリー、CGなどさまざまなジャンルの映像を取り扱っていました。でも、私は入学当初からアナログ手法のアニメーションがやりたかったので、特にアニメーションの授業に没頭していました。紙に描いた絵をパラパラ漫画のように動かす線画のアニメーションと、立体物を動かすコマ撮りのアニメーションの両方をつくっていました。
大学時代の制作風景その1
大学時代の制作風景その2
杉本:大学時代に大好きなチェコにも行ったそうですね!
北川:他の学生と一緒に、念願のチェコへ研修旅行に行きました。当時、大学教授の中にアニメーション作家の相原信洋さんがいて、年に1〜2回学生たちをチェコへ連れて行ってくれていたんです。チェコにある国営のスタジオも見学させてもらい、チェコの美術大学の学生さんとも交流する機会があって。
それぞれの作品を上映し合ったのですが、面白いことにチェコの学生さんはCGばかりで、一方の私たち日本の学生はコマ撮りばかり。双方が憧れ合っていたような感じでした。
杉本:就活時はリーマンショック後で就職難だったとか。
北川:コマ撮りで進路を考えた場合、自主的に作品を作るか、東京にいくつかあるスタジオでアシスタントとしてスタートするか…。現実を考えたとき、一人暮らししながらの生活が難しいと感じました。正社員で就職できるアニメーションだと「CG」が選択肢に入り、ほぼ未経験状態で就活をしていたんです。
クリエイティブ関係の応募書類には作品集(ポートフォリオ)が必要なのですが、CG作品がないので、デッサンを載せていました。そんな中でご縁があり、自動車関係などBtoBのコンテンツ制作をメインとする制作会社に入社しました。
杉本:入社後はどんなことを?
北川:その会社は、当時約100人規模くらいで紙もWEBも映像も媒体問わずに制作していました。そんな中で私はCGアニメーションの部門に配属され、5年間働いていました。入社から3年ほどのタイミングで、iPadのアプリなどUIに力を入れていくことになり、CGもやりながら、グラフィックデザインの仕事をさせていただく機会も増えていきました。
CGといえばMayaというソフトが主流。最初にさわったMayaのバージョンは、インターフェースがすべて英語でした。今のようにYouTubeで教えてくれる人もおらず、先輩社員に教えていただいたり、英語のブログを翻訳したりしながら覚えていました。
デザイン事務所開業、法人化
杉本:独立した理由は何だったんでしょう?
北川:結婚して三重県へUターンすることになり、退職したんです。再就職を考えたとき、三重県で映像というと、当時はなかなか需要がないと考えて。ホームページやチラシといったデザインの求人を探しはじめました。そこで偶然委託でお仕事をいただき、2015年に「Cono-design(コノデザイン)」の屋号でフリーランスデザイナーとして働き始めたんです。
出産・育児を経て、現在はデザインと映像、両方に携わっています。
杉本:個人事業主として活動する中での法人化。そのきっかけは?
北川:きっかけは大きく二つあります。一つは、他の経営者の方々と出会って視座が上がったこと、もう一つはコンテストでの受賞で映像を軸にしようと思ったことです。
2019年秋頃、当時オンラインサロンが流行りはじめていて、何かコミュニティに属することに興味を持っていました。
そんなとき、お世話になっている方に三重県女性起業家コミュニティwiz:が立ち上がるという話を聞いてキックオフイベントに参加し、会員になりました。そこで数多くの女性起業家さんと出会うきっかけにつながったんです。
杉本:私も同じくwiz:の会員ですが、本当に多種多様な女性起業家さんが集まっていらっしゃいますよね。
北川:はい。wiz:を通じて事業拡大を目指していらっしゃる女性起業家と出会い、先行くロールモデルを見ながらたくさんの刺激を受けました。
そんな中、事業計画について相談できる機会があって。自分の現状と課題感をお話したところ「法人化してもいいんじゃないですか?」と、サラッと言われたんです。それまでは考えてもいなかったのですが、その一言で法人化に対するハードルが下がり選択肢の一つに入りました。どこかで無意識に「女性だから」とストッパーをかけていたのかもしれません。
そこから法人化について調べれば調べるほど、自分が思っているほど難しいことではないと思うようになりました。
法人化にはいろいろな手続き、資料が必要なのですが、wiz:メンバーの中には行政書士さんもいらっしゃってすぐにご相談できる環境にありました。普段から私の事業について知ってくださっていたので、安心してお願いすることができたんです。
「デザイン」から「映像」に特化
杉本:「映像」への思いを醸成されたのはコーチングだったそうですね。
北川:2021年は、半年間ほどコーチングをお願いしていました。
コーチングとは、コーチの方との対話を通じて自発的な行動を促すというものなのですが、この期間があったおかげでぐっと自己理解が進んだように思います。
自分の心の中を掘り下げて内発的動機を考えたとき、「コマ撮り」「CG」「アニメーション」というキーワードが浮かび上がってきたんです。「やっぱり映像が好きだな」「やりたいな」、そんな思いが湧いてきました。
映像に絞って活動していこうと考えたタイミングで、それに合わせて法人化もしてしまおう!と。周りからの刺激を受けつつ、一気に法人化まで進めた感覚です。
杉本:ジャンルを「絞る」というのは勇気が必要かもしれません。
北川:そうですね。自分が本当に向いているかどうか…腕試しの気持ちでコンテスト応募にトライしました。
はじめにお話しした2020年秋の「Designship2020」のデザインシップチャレンジでの審査員賞受賞、2021年6月に開催されたオンラインイベント「モーションモンスター」内のコンテスト「ダンスモーションアワード」でご紹介いただいたことも、自信につながって。「映像でやっていきたい!」という思いを強く後押ししてくれました。
杉本:「モーションモンスター」はモーションに特化した映像関係のイベントだったそうですね。
北川:モーションに特化したオンラインイベントで、ここまで大々的なものは初だったのではないでしょうか。
近年、シネマティックカメラ、ミラーレスカメラの価格が下がってきて、以前よりも低コストでフィルムのような映像が撮影できるようになりました。そこから個人にも普及してきて、ブームが到来。映像に対するハードルが下がって、モーションにもその流れがやってきたのかなと感じています。
モーションでは特に「Adobe After Effects」というソフトを使用しますが、それもサブスクで月額数千円。一気に普及してユーザーも増える中、「モーションモンスター」が開催され、コンテストも実施されました。
ダンスモーションアワードはダンスがお題で、ダンスにモーションを付けるんです。
過去にやっていた振付と一緒で、しかもCGも自分でできる強みがあり、自分に向いている課題だと感じました。
入賞は逃したものの最終ノミネートまで残り、イベントで上映して取り上げてもらえて。強者の方々に打ちのめされましたが、やっぱりモーションが好きだなと実感しました。
モーショングラフィックスとこれからの展望
杉本:初歩的な質問なのですが、「モーショングラフィックス」と「グラフィックデザイン」にはどんな違いが?
北川:デザインには、インテリア、プロダクト、UIデザインなど、いろんなものがありますよね。その中で「グラフィックデザイン」という言葉は、平面上のビジュアルでよく使われます。例えばチラシ、ポスターなどです。
一方でモーショングラフィックスは、グラフィックデザインがベースであって、それを動かすモーションがある。つまり、モーションだけはできない、グラフィックデザインありきなんです。
モーショングラフィックスで良しとされるのが、どこでストップボタンを押しても、デザインとして成立している状態。例えば10秒のモーショングラフィックスがあったとして、3秒で停止しても5秒で停止しても、絵として成り立っている状態を作れているのが一般的に良いモーショングラフィックスといわれています。
私はもともと映像が大好きで、これまでにデザインのキャリアも積んできました。モーショングラフィックスは、自分の「好き」と「キャリア」を生かせるジャンルだと感じています。
杉本:今後モーショングラフィックスはどんな分野でニーズが高まっていくと思いますか?
北川:広告を含め、近年の動画は短尺化が進んでいます。例えばTikTokなどもそうですが、ユーザーを5秒留めておくのも難しい状況。そんな中、モーションは手を変え品を変えぱっと動くことから、ユーザーの目を惹きつけておくのに効果的なんです。
イントロが長いとスキップされる確率が上がる一方、モーションなら短時間でより多くの情報を届けやすく、短尺化してきた動画広告の現状にぴったりマッチする手法だと思います。
またCMの撮影などでは、演者・撮影者を含めて大所帯になりがち。少しずつ落ち着いてきてはいるものの、コロナ禍で撮影がしづらい情勢でもあります。ですが、モーションであればロケも不要ですしリモートで制作可能。そういった背景から一気にモーションが普及し、YouTube広告などでの活用も増えたのではと思っています。
北川:制作会社さんによっては、グラフィックス制作とモーション制作を完全分業化しているところもあって。分業することでクオリティアップにも繋がっていると思います。
杉本:北川さんの場合、両方ともできるのが強みでもありますね。
北川:例えば中小企業様など、限られた予算の中で動画制作を検討されているケースもあります。私の場合、自分でイラストを描いて自分でモーションをつける、一貫して制作できるため比較的コストを抑えることができます。
ただ、先にお伝えしたように分業化がクオリティアップにつながる側面もあるので、今後は協業パートナーさんとも連携しながら、チームで作っていくことを目指したいと思っています。
杉本:今後はどんな分野でモーショングラフィックスの制作を考えていますか?展望を教えてください。
北川:私には現在3歳・5歳の子どもがいることもあって、子ども向けのアニメーションを作ってみたいですね。私の動画の原点が、NHKのニャッキやパクシ、ピングーといった可愛らしいコマ撮りアニメーションにあります。そういった作品を作りたい思いが強いです。
子ども向けでいえば、例えば知育、子ども向け教材、企業の工場見学での動画アニメーションなど。そんな仕事ができればと考えています。
今後は株式会社1コマの作風を育てていけるよう、作家性を活かしたサンプルも準備中です。ぜひご覧いただければ嬉しいです。
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